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岡山地方裁判所 平成8年(わ)651号 判決 1997年6月24日

本店所在地

岡山県津山市院庄五九八番地

日之出物産株式会社

右代表者代表取締役

朝比奈靖士

本籍及び住居

岡山県津山市院庄五九八番地

会社役員

朝比奈靖士

昭和一六年四月三日生

右の者らに対する各法人税法違反被告事件について、当裁判所は、検察官青木裕史出席の上審理し、次のとおり判決する。

主文

被告人日之出物産株式会社を罰金一八〇〇万円に、被告人朝比奈靖士を懲役一年にそれぞれ処する。

被告人朝比奈靖士に対し、この裁判確定の日から三年間その刑の執行を猶予する。

理由

(罪となるべき事実)

被告人日之出物産株式会社(以下「被告会社」という)は、岡山県津山市院庄五九八番地に本店を置き、麦、雑穀類及び特定米穀の集荷購入並びに販売等を目的とする資本金一〇〇〇万円の株式会社であり、被告人朝比奈靖士は、被告会社の代表取締役として、その業務全般を統括しているものであるが、被告人朝比奈は、被告会社の業務に関し、法人税を免れようと企て、架空仕入れを計上し、仮名の定期預金を設定するなどの方法により被告会社の所得を秘匿した上、

第一  平成四年三月一日から平成五年二月二八日までの事業年度における被告会社の実際所得金額が五一一〇万四〇一一円(別紙修正損益計算書参照)であったにもかかわらず、同年四月三〇日、同市田町六七番地所在の所轄津山税務署において、同税務署長に対し、その所得金額が二一五七万六〇四五円で、これに対する法人税額が六六四万五四〇〇である旨の虚偽の法人税確定申告書を提出し、そのまま納期限を徒過させ、もって、不正の行為により、被告会社の右事業年度における正規の法人税額一七九一万四四〇〇円と右申告税額との差額一一二六万九〇〇〇円(別紙ほ脱税額計算書参照)を免れ

第二  平成五年三月一日から平成六年二月二八日までの事業年度における被告会社の実際所得金額が一億三八七五万六一四二円(別紙修正損益計算書参照)であったにもかかわらず、同年四月二八日、前記税務署において、同税務署長に対し、その所得金額が三五五四万五四二九円で、これに対する法人税額が一二三二万〇二〇〇円(留保金に対する税額五〇万四四〇〇円を除く)である旨の虚偽の法人税確定申告書を提出し、そのまま納期限を徒過させ、もって、不正の行為により、被告会社の右事業年度における正規の法人税額五一〇二万四三〇〇円と右申告税額との差額三八七〇万四一〇〇円(別紙ほ脱税額計算書参照)を免れ

第三  平成六年三月一日から平成七年二月二八日までの事業年度における被告会社の実際所得金額が一億〇二五七万〇三〇五円(別紙修正損益計算書参照)であったにもかかわらず、同年四月二八日、前記税務署において、同税務署長に対し、その所得金額が三五九一万二八八〇円で、これに対する法人税額が一一六五万二一〇〇円(留保金に対する税額六九万三六〇〇円を除く)である旨の虚偽の法人税確定申告書を提出し、そのまま法定の納期限を徒過させ、もって、不正の行為により、被告会社の右事業年度における正規の法人税額三七二五万〇九〇〇円と右申告税額との差額二五五九万八八〇〇円(別紙ほ脱税額刑難所参照)を免れ

たものである。

(証拠の標目)

判示事実全部について

一  被告人朝比奈の当公判廷における供述

一  被告人朝比奈の検察官に対する供述調書四通

一  原田義興の検察官に対する供述調書

一  岡崎延元の大蔵事務官に対する質問てん末書

一  捜査報告書

一  「売上高調査書」と題する書面

一  「仕入高調査書」と題する書面

一  「期末棚卸高調査書」と題する書面

一  「支払手数料調査書」と題する書面

一  「受取利息調査書」と題する書面

一  「雑収入調査書」と題する書面

一  「支払利息割引料調査書」と題する書面

一  「雑損失調査書」と題する書面

一  「事業税認定損調査書」と題する書面

一  「減価償却の償却超過額調査書」と題する書面

一  「減価償却超過額の当期認容額調査書」と題する書面

一  「現金調査書」と題する書面

一  「定期預金調査書」と題する書面

一  「電話要旨」と題する書面

一  登記簿謄本(被告会社の関係で)

判示第一及び第二の各事実について

一  大久保俊夫の検察官に対する供述調書

判示第三の事実について

一  池上宣雄の検査官に対する供述調書

(法令の適用)

被告人朝比奈の判示各所為はいずれも法人税法一五九条一項に該当するところ、各所定刑中いずれも懲役刑を選択し、以上は刑法(平成七年法律第九一号による改正前のもの。以下同じ)四五条前段の併合罪であるから、同法四七条本文、一〇条により犯情の最も重い判示第二の罪の刑に法定の加重をした刑期の範囲内で同被告人を懲役一年に処し、情状により同法二五条一項を適用してこの裁判確定の日から三年間その刑の執行を猶予することとする。

被告人朝比奈の判示各所為は被告会社の業務に関してなされたものであるから、被告会社については、判示各所為につきいずれも法人税法一六四条一項により同法一五九条一項所定の罰金刑に処すべきところ、情状によりいずれも同法一五九条二項を適用し、以上は刑法四五条前段の併合罪であるから、同法四八条二項により各罪所定の罰金の合算額の範囲内で被告会社を罰金一八〇〇万円に処することとする。

(量刑の理由)

本件は、三事業年度にわたり合計七五五七万一九〇〇円の法人税をほ脱したという事案である。ほ脱額が相当に多額であり、ほ脱率は平均約七〇パーセントである。また、不正手段として、いわゆるつけ商売を利用して架空仕入を計上したり、いわゆる預け在庫を利用して棚卸除外をするなど、その手口は巧妙である。犯行の動機は、要するに事業規模拡大資金を調達するためであり、特に酌量すべきであるとも思われない。しかし、被告会社は、本件ほ脱にかかる税額はもとより、加算税、延滞税等をすべて納付したこと、贖罪のために日本赤十字社に白米二万〇四〇〇キログラムの寄付(三四五万一七〇〇円相当)をしたこと、被告人朝比奈には二〇年以上前の罰金前科しかないこと、同被告人の反省態度を考慮して、主文のとおり量刑した。

よって、主文のとおり判決する。

(裁判官 楢崎康英)

修正損益計算書

<省略>

修正損益計算書

<省略>

修正損益計算書

<省略>

ほ脱税額計算書

日の出物産株式会社

(1) 自 平成4年3月1日

至 平成5年2月28日

<省略>

(2) 自 平成5年3月1日

至 平成6年2月28日

<省略>

(3) 自 平成6年3月1日

至 平成7年2月28日

<省略>

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